台湾に、世界に挑む。人と企業のストーリー

CASE STUDY
事例紹介
徳島を台湾に、世界に知ってほしい。「県ジン」とともに始まった三尾武史さんの海外進出
2026.11.02 MON

株式会社台湾番長のクライアントを紹介していくシリーズ、第7弾は、徳島県美馬市の食品卸業「丸忠笠井海産有限会社」で代表取締役を務める三尾武史さんです。地元の商材を全国へ、そして日本全国の特色を活かしたクラフトジン「県ジン」を台湾へ。地方から世界へとつながる挑戦についてお話をうかがいました。

縁あって徳島に。徳島のいいものを全国へ

大阪出身の三尾さんが徳島県美馬市に移り住んだのは、15年ほど前のこと。妻の実家である会社に、後継者がいないという話を聞いたことがきっかけだ。もともと経営に興味があったこともあって、東京の前職を辞めて引っ越しを決めた。代表に就任したのは6年ほど前だ。

会社は地元・徳島の商材を大手チェーン店や道の駅、産直、空港、JRの主要駅などに卸す事業がメイン。通販事業も急拡大し、ECからの売り上げが全体の6、7割を占めるほどになった。近年は他社のWebやECサイト構築の支援、商品開発にも事業を広げている。

「本当にいろんなことをやっているんですけど、今は自分自身がジンの活動をメインに、一生懸命広げているところですね」

朝方の飲み会から始まった「県ジン」

そのジンとは、47都道府県それぞれの特色を生かして造る「県ジン」のこと。三尾さんは、徳島県の特産品であるすだちをキーボタニカルとした「徳島県ジン」を生産している。参加のきっかけは、経営者が集まる会合で「県ジン」プロジェクトのオーナーと、香川の県ジンを手がける人物に出会い、朝方まで飲んでいた席での一言だったという。

「『こんなんやってるんやけど、どう、三尾さんやれへん?』みたいな話から、面白そうですねって引き受けたんです」

それまで酒造りにも酒の販売にも縁がなかった三尾さんだが、2024年末ごろにプロジェクトに参加。2025年の5月に「徳島県ジン」が完成し、11月には酒類販売免許を取得して本格的な販売をスタートさせた。現在は全国の県ジンの物流と保管、ECサイトの請負をすべて三尾さんの会社が担っている。

「面白いプロジェクトだったので、自分たちの強みで『県ジン』をもっと盛り上げられる可能性があるなと感じました。こちらからご提案させてもらって、各県のオーナーさんにも了承をいただいてやっています」

外崎との出会いは、共通の知人がいたことと、県ジンプロジェクトの会での挨拶がきっかけだった。当初は東京でジンを広める手伝いを頼んだところから交流が始まり、外崎の本業である台湾進出支援へと話がつながっていった。外崎からは自社商品の海外展開を提案されたものの、三尾さんはジンに重きを置いて、台湾に県ジンで進出したいと考えている。

三尾さんが自社の強みを活かして物流の担当やECサイトを運営しているように、他県の県ジンオーナーにはすでに自社商品を海外輸出しているところがある。その会社とともに手続きを進められないかと考えているが、三尾さん1人の判断では進められず、プロジェクトオーナーの意向を確認しながら歩みを進めている段階だ。

「台湾の人たちはすげえ」現地で感じた危機感

台湾には今年の1月、外崎と県ジンプロジェクトのオーナーとともに訪れた。そこで感じたのは、強い危機感だったという。

「台湾の人たちは国土の狭さや人口の少なさを逆にエンジンにして、どんどん海外に展開しながら事業を大きくしていくスタンスの人が多い。日本の経営者はこのままだと抜かれるなと、正直そう思いました」

日本も少子化が始まっている状況で、国内でパイを奪い合っている状態ではないだろう…という考えが三尾さんにはあった。台湾の人たちは何十年も前から、そういった少ないパイを克服するアイディアを持ち、ビジネスに取り組んでいると感じた。「台湾の人はすげえなと思いましたね。なんでかわからないですが、すごい敗北感を感じて。シュンとなって家に帰ってきました」

だが、そういったこともまず行かないとわからない。確実に大きな収穫となった。活気のある街の様子は「自分が20代の頃の東京みたい」だと感じ、LINEを日常的に使いこなすスピード感にも感心させられた。

「今までの自分の常識とは違った人たちとビジネスをできれば、自分自身の成長につながるかなと感じられました。売れる、売れないはまだわからないですが、すごく刺激的でしたね」

外崎とともに動いてみて感じたのは、営業力と行動力のすごさだ。街を歩いている最中にも、酒屋にどんどん入っていって、お店の人に話しかけていろんな情報を聞き出していた。台湾に実際に住み、実体験をした上でのレクチャーも納得感があった。

「あとは、寝る間も惜しんでなんでもやっちゃうみたいなところ。僕もそういうところがあるので、仕事に対する価値観も似ていて、すごくやりやすいと思っています」

海外進出コンサルタント、という名目で契約をしているが、「コンサルというより、伴走してくれるパートナーだと思っています」と信頼を寄せている。

地元企業と一緒に、大きくなっていきたい

今後は日本国内での出荷体制を整えつつ、台湾の現地パートナーとのつながりを築いていく方針だ。ジンを売りたいという思いはもちろんあるが、目標はあくまで「自分だけが儲かればいいということではない」という。

現在も地元のメーカーと連携しながら、「こういう商品がほしい」という要望に合わせて商品開発をしたりしているが、その関係の延長で台湾向けの商品を作り、出荷していけたらと考えている。

「できたら自分が関係している人たちと一緒に、事業を大きくしていけたらいいなと思っています。みんなが楽しくて、みんなが嬉しい、それが一番理想だなと思っていて。そのきっかけを台湾でできたらいいなとも思っています」

高松空港での試飲イベントや、阿波踊りとのコラボレーションなど、「県ジン」をきっかけに広がる縁は徳島の内外を問わない。10月のビジネスイベントでは、実際に台湾のビジネスマンの前でプレゼンを行い、試飲もしてもらった。人と人がつながっていく面白さを楽しみながら、三尾さんの挑戦は着実に前へ進んでいる。